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いい菌と雑菌が共生する自然の恵み 発酵リポート!~寺田本家を訪ねて~

 いい菌と雑菌が共生する自然の恵み


発酵リポート!~寺田本家を訪ねて~

 今年の初めに、発酵スタディツアーに行ってまいりました。以前、スタジオ・ヨギーでも講座をしてくださっていた食養生の辻野先生が率いる、日本食事療法士協会主催によるイベントでした。伺ったのは、千葉県の神崎町(こうざきまち)にある、寺田本家さん。微発泡の玄米酒「むすひ」を聞いたことはありませんか?そのお酒で有名な酒蔵です。ちょうど寒仕込みというお酒の仕込みが終わりを迎えるころでした。


最寄り駅は、JR成田線の「下総神崎(しもうさこうざき)」駅。毎年3月には、「発酵の里こうざき酒蔵まつり」というイベントが行われるほど、酒蔵、醤油蔵などが点在する“発酵のまち”。聞いたところによると、インフルエンザが流行っていてもこの地域でかかりにくい、とのこと。発酵パワーに期待が高まりました。

発酵ランチをいただく

蔵を改装したお部屋で、まずはランチをいただきました。当主の奥様の手作りです。奥様は、寺田本家のお嬢様で、代々娘しか生まれなかったことから「5人娘」というお酒ができたほど。

ベジタリアンでもある奥様の地元の無農薬米、旬の野菜と、甘酒、酒粕、塩こうじ、味噌など手作りの発酵食品をふんだんに使ったお弁当は、とっても美味しかったです。

特に酒粕のお味噌汁が深い味わいで、甘みもあって印象に残りました。

この日は、24代目当主の寺田優さん自らが案内をしてくれました。

1月20日ぐらいまでが、お酒のスターターとなる酒母(しゅぼ)の仕込み時期。蔵の中には雑菌も含め多様な微生物がいて、共生しています。酵母菌、乳酸菌なども“蔵つき”の菌を大切に使っています。

寺田本家の敷地内には井戸が2本あり、仕込みには全て井戸の水を使っています。340年枯れたことがなく、それも裏に神崎神社があり、その杜のおかげで守られているそう。寺田本家の水は、ミネラルを含んでいるやや硬水。

お米は、契約農家が作る無農薬のお米を使用。外は硬く、中は柔らかい、という蒸し方をします。それは、じわじわ発酵するための工夫。

麹づくり

「麹」は、中国から伝わった漢字で、「糀」は、日本でできた字。麦を原料としていたのか、米を原料としていたのか、漢字にも文化が垣間見れますね。麹室(こうじむろ)は室温が35〜38℃に保たれており、温度管理がされています。部屋の周りを炭で囲み、微生物にとっていい環境に整えられています。炭は多孔質なので、穴のまわりはマイナスイオンを帯電しやすい。それが、微生物にとっていい点で、湿度も安定しやすくなっています。麹室は、昔は七輪や藁を燃やしてあたためていたそう。

麹づくりは、3日でできます。お米を蒸して、発酵して、という工程を断続的におこなうので、蔵人たちは寒仕込みが終わる頃には体重が10kgぐらいやせるそうです。肉体的に過酷なお仕事なんですね。

蒸した玄米を広げ、種麹を撒きます。コウジカビがお米につくと、でんぷんを分解してアミラーゼをつくったり、たんぱく質を分解してうまみ成分を作り出します。

1日目玄米の状態。そこに種麹を撒きます。そこから3日で麹ができていきます。

発酵したお米が甘くなるのは、酵素で、ブドウ糖になっているから。発酵食品が消化にいいのは、微生物が先に分解してくれているから。麹が酵素を作ることによって発酵をすすめています。

麹をお酒に使うのは、日本くらいだそうで、お粥にコウジカビを入れると甘酒ができます。

寺田本家では、蔵づきの麹を使っています。研究機関で調べたところ、4種類のコウジカビがありました。

コウジカビをお米につけると、胞子を出してそれが緑色になります。麹づくりは人の手を経るので、人が変わると味が変わります。発酵は、菌のおかげでもあり、人のおかげでもあるのです。

夏、菌を採取します。蒸したお米を蔵の中に2、3週間おいておくと、カビが生えてきます。そこからコウジカビを選んで培養するのです。コウジカビの色は緑。実際に、食べて香りをかいで、DNA鑑定にも出して、コウジカビを判断します。保存は、常温で置いておきます。これが、夏の仕事です。

麹づくりをしていると、手がすべすべになるそうです。

20〜25kgコウジカビを貯めておいて、一回では、100g程度使います。撒いては混ぜ、撒いては混ぜ、を3回くらい繰り返します。さっぱりしたいときはあまり撒きません。濃い味にしたいときは回数を重ねて撒きます。撒いてるときに、万が一吸い込んでしまっても大丈夫です。舞い上がったら、落ちて落ち着くのを見守ってから混ぜます。

酒母(しゅほ)づくり

タンクの中で酵母菌、乳酸菌を育てています。生酛づくりといい、まずは柿渋を塗ってある木桶のなかに、麹をいれ、蒸したお米を入れてすり潰していきます。唄を唄いながらやると、みんなでリズムがあい、息が合うのです。唄を聴いて、微生物が元気に発酵するとも言われていて、実際、味がまろやかになって美味しくなります。

「楽しい気持ちが菌にも伝わるんじゃないかなと、思います。その菌が入ったお酒を飲むと楽しい気分になったりするんじゃないかな」と寺田さん。

唄の内容は、鶴とか亀とか松竹梅など、目出度いことや景気のいいことをたくさん言って心を奮い立たせるような歌詞が多いそう。丹波杜氏の唄、能登杜氏の唄、など杜氏ごとに唄が違い、節回しも違うのだとか。

お米を洗うときにも唄がありました。昔は、唄を大事にしていました。日本の昔の仕事唄を集めたら35,000くらいあったそう。寺田本家でも10年前から唄を復活しました。唄を15番まで歌うと、20分くらいかかります。お米がどろどろになり、麹が溶けやすくなります。ここから40日かけて、酒母を育てていきます。

硝酸還元菌(しょうさんかんげんきん)→乳酸球菌→乳酸桿菌 (にゅうさんかんきん)→酵母菌が現れてアルコールが発酵されます。菌のバトンタッチが行われているんですね。この発酵のプロセスは、江戸時代から機械を一切使わず、行われていました。そういう時代のお酒は、だからこそ百薬の長と言われていたのかもしれません。酒の漢字の「酉」のかたちは、瓶(かめ)のかたちを表していると言われていましたし、昔の医学の字「醫」にも「酉」が含まれていました。

お酒も工業化され、添加物いっぱいの酒が造られるようになりました。お酒を飲んだら頭が痛くなったり、翌日身体が重くなるなど心当たりがあるのではないでしょうか?

マットをかけたり、はずしたり、温度管理をして、菌に心地よい環境をつくっていきます。

「酒造り」という字をみても、「作る」は手作業の意味。「造る」は神様の前で、お供えをつくるという意味でした。お酒は神事に使っていたので、神社で作っているところも多いのです。

乳酸発酵するとバリアをはって、他の雑菌が入らなくなります。酒母、乳酸菌は、低い温度でも元気に働きます。10℃以下になる冬は、酒造りに最適な季節なのです。

醪(もろみ)づくり

醪は、酵母菌のおしっことおならというと、分かりやすいかもしれません。酵母菌のおしっこがアルコールで、おならが炭酸です。


タンクは、3800リットルのホーローですが、タンク一本で一升瓶2000本分になります。2400kgの米がタンク一本に入ってる計算です。

オリンピック選手が農薬を使ったものを食べるとドーピングにひっかかることがあるそうで、だから、選手にオーガニック食品を食べてもらおう、という動きがあります。

一週間くらいで泡が盛んに出ます。

あとは絞る、というタイミングの醪を飲ませてもらいました。アルコール度は20度くらいだそう。

お酒の飲み比べ

酒蔵ツアーを終えて、蔵のお部屋に戻り、みなさんで順々にいろんなお酒をいただきました。

「発酵食品は、自然とともに見えない大きな力でできています。発酵食品で世界平和を目指しています。」と寺田さん。

発酵食品から世界平和、と、なんだか飛躍しているようなのですが、お話しを聞いてみると、オフフレーバーといって、綺麗なものが求められているのが最近の日本酒の世界。雑菌もふくめて、菌同士が共生しているのが蔵。菌の多様性に支えられて作られているお酒は、その年の気候や素材によって味にバラツキが出てくることもあります。封を切ったら刻々と味も変化していきます。逆に「均一の味」「腐らない食品」は、工業化の賜物なんですね。

「何を買うかが未来を決める」。買わなければ、作られなくなり、その産業も消えてしまう運命。生き物のように大切につくられている発酵食品がなんだか愛おしくなる体験ができたこの日、昨今、健康的な側面から見直されてきた日本の伝統的な発酵食品である、醤油、味噌、そして日本酒を、いまさらながら誇らしく思いました。

  寺田本家さんのではないですが、発酵食品の仲間としてご紹介!スタジオ・ヨギーで発売中。
 

寺田本家

自然の原点に戻って、酒造りをしている蔵元。無農薬、無添加、そして全量昔ながらの生もと造りで、自然酒「五人娘」、「香取」を醸造している。小さな蔵のため、常時の見学はおこなっていません。蔵見学をご希望の方は、2月にある見学会か、毎年3月に開催している“お蔵フェスタ” におでかけください。

見学会 2018年は、2月のみの予定。2月/2日(金)、3日(土)、9日(金)、17日(土)、23日(金)、24日(土)。各回13:30~16:00 、定員30名。

蔵見学ツアー(お蔵フェスタ) 2018年は、3月25日(日)開催予定。

詳細・お申込みは、寺田本家のウェブサイトからどうぞ。 https://www.teradahonke.co.jp/

取材 七戸綾子

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